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2007年12月05日

ノーブルな講演に捧げるエキセントリックでぺダンティックな蛇足

時代は経巡(へめぐ)り、

 この地では若き者がおのがために死に行き、

 彼岸の地では大義のために死に行くと云う。

そこかしこで炎が上がり、

 血が流れ、傷つき、倒れ、やがて腐敗し、

 阿鼻叫喚の咆哮は、津波となって押し寄せる。

我独り、海べりに立ち、

 釣糸を海に垂れつつ、次の時代を釣り上げる。

時代、そんな言葉からあなたは何を想いますか?

冬晴れの暖かな陽気に包まれた12/1(土)、今日から師走という日にも関わらずうららかな日にかねてから楽しみにしていた「神奈川大学 みなとみらいエクステンションセンター(通称:KUポートスクエア)」が主催する《時代を開く-ネクスト・ソサエティへ》と題された連続講演会の3回目に参加した。島田雅彦先生の話を拝聴するためである。
島田先生は、『優しいサヨクのための嬉遊曲』を引っさげて一躍文壇に躍り出た新進気鋭の小説家であり、(恥ずかしながら)今回の講演で初めて知ったが、作家活動の傍ら法政大学で教鞭もとられているらしい。かように著名な作家の一人である島田先生の話を、それもたった2000円也で拝聴し、目の前で見ることができるだけでも思わず興奮してしまう。行くしかない。思い立つと矢も盾もたまらず、そそくさと申し込んでしまった。

私如きの凡庸な人間に島田先生の語る一時間半にも及ぶ貴重な話の要諦が十分に理解できるはずもあるまいが、たくさんの素敵な話を聞いたので、ちょっくら無駄話を書くことにする。
今回主催者が島田先生に依頼したテーマは「文学と時代風景」である。無論、私には一体どんな話を展開されるのか、想像だにできないが、「文学」というキーワードは私の関心をいたく引くものであったし、文学について作家が語るという場に私が居合わせるということは、十分に魅力的なことである。

話の冒頭、島田先生は言う。
――時代を創る者と(その)時代の中にいる者がいます。アーティストとは、時代を作る者のことです。

この冒頭の一言こそが、「文学と時代風景」と題された講演を貫く、島田先生の話の一番の機軸ではなかったかと考えている。島田先生は、部屋に入り、壇上に上がるなりおもむろに(挨拶もなく、まさにおもむろに)静かに結論を言い放ったのではあるまいか。

話は、東京を取り巻く時代とその時代ごとの象徴にまず言及された。東京タワー、六本木ヒルズ、東京都庁・・・・・・。さらに場面は、昨日まで島田先生が滞在されていたという京都の寺院、その庭に配置された枯山水に代表される庭園の意匠、さらにはその意匠の設計に込められた意味に及ぶ。「茶室は、なぜあのような狭い空間」なのかについての説明は、非常に興味深いものであった。
具体的な事例を次々と玉手箱の中から取り出すがごとく我々の前に提示され、それらを通じて日本における時代(あるいは歴史といっても良いかもしれない)を概観してゆく。
後半は、時代、とりわけ「近代」と称される第二次世界大戦およびその後の日本のドラスティックな移り変わりと、それに深く関わり、いや先生の言葉を借りるならばそれを創造した著名な作家についての話へと移る。当たり前に面白い。
漱石、鴎外、谷崎に太宰、やがて話は石原慎太郎と大江健三郎、江藤淳に及ぶ。
自分自身がその一員であることを自負されているからではあるまいと思うが、いわゆる現代作家(両村上、よしもと・・・・・・等々)には触れられなかったが、大変に面白く、有意義な時間であった。ここで全てを書く訳にはいかない(書く筆力を持ち合わせない)が、機会と興味があれば、是非一度このような講演には参加されることをお勧めする。

日本の近代は、戦争→敗戦→高度経済成長→バブル景気と移ろい、今や日本は「平和ボケ」しているのであろう。時代を形成し、牽引するもの、時代を象徴するものは「ヒーロー」である、らしい。先生のお話を聞いていると(これも詳しくは書けないが)「なるほど」と合点がいく。
この「平和ボケ」ムードに満ち満ちた現代、我らが時代を産出するものはサブカルチャーであるらしい。「キャプテン翼」がサッカーブームを呼んだのはその典型である。省みれば、私が始めて「ブラック・バスを釣ってみたい」と強く思ったのも「釣りキチ三平」の存在があったからであろうか。平和な時代に身を委ねて、今やまごうかたなき釣り親父と化した私のルーツも、こんなサブカルチャーの中に見出せるのかと、はたと膝を打った次第である。

世界規模で見るならば、今も彼岸では戦争が起きていて、日本も否応なくそんなラディカルな情勢に関与せざるを得ない。しかし我々を取り巻く時代は、やはり今も平和ボケしている。危機感の欠片すらない。無論、私もそうである。
争い、温暖化、我々の住む地球の表面は常にダイナミックに動いている。私がのんびりと釣糸を垂れる海にもいつ津波が押し寄せるかも分からない。かような状況であるにも関わらず、そんなことには構いもせず目先の魚が釣れたの釣れないのという瑣末な命題にのみ目を向けている。
釣りをしながら、釣りを通じて今の地球温暖化という社会問題に、いち早く言及し、警鐘を打ち鳴らしていた開高健先生のような慧眼は持ち合わせていない。ゆえに私はこれからも誰かの作る時代の流れに身を任せ、そこにたゆたう芥の如き存在であり続けるのだろう。

いつか、島田先生のような、素晴しい作家になりたいという願望だけをボケた頭の中で妄想しつつ・・・・・・。

(了)



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この記事へのコメント
あれ、文学までコチラに!?
私的死的詩的感想文は閉めるですか??
私は文学的なセンスはないので、チンプンカンプンですが、日経サイエンスの催しなんかには逝ってみたいと思ったりしてます。
一度、抽選で脳科学のが当たったのですがね、、、家庭の事情で却下(T_T)
私の場合、別に科学者になりたいわけでもなく、一趣味として楽しんでますが。
Youさんは、いつか本当に作家になれると良いですね!(^^)!
Posted by taka at 2007年12月05日 19:00
あっちもどうせ死的な文章の集積なので、こちらに書くつもりです。それに今回のは、感想文ではないので、どちらにせよ死的のほうには書けないですね~
なれない詩まで書いてしまい、なかなかハズい駄文になりましたがノ(´д`*) 、いつまでも無駄な夢を追い続けているのもかなり恥ずかしいかも~。でもやめられませんが・・・
Posted by YouYou at 2007年12月05日 22:56
難しすぎてコメント不可能~)笑(
Posted by daisuke at 2007年12月06日 22:27
そっ、そんなぁ~^^;
大概難しいところは、島田先生の受け売りなんで・・・・・・(笑)
Posted by YouYou at 2007年12月07日 00:43
出遅れ甚だしいのですが
何事も文化的側面に触れてこそ深みが増すという良い例だと痛感致します。
私はこの2年ほど落語を月に2回程聴きに行ってます。
お気に入りは立川流一門でして、ここは落語協会に属さず寄席での公演許されてない流派ですが、二つ目や真打の昇進に独自の基準を持っている為、若手のレベルが高く前座から楽しませてくれます。
しかも寄席ではなく区民ホールや集会場というロケーションなので内容の割に安い事が多いです。
古典の噺も歴史的背景や生活文化を思い浮かべながら楽しむ世界。
司馬遼太郎や池波正太郎なんか読みながら浮かぶシーンに重なりますね。
Posted by よっちゃん at 2007年12月15日 01:02
よっちゃんさん、私も何度か落語を聴きに行きましたが、立川流はまだ聴いたことがありませんでした。
池波正太郎もいいですね~、大好きです。
旅行に行ったりしたときも、ただ何となく文化遺産を「観光」するのでなく、たまにはじっくりとその背景なんかを見聞きすると、何かまた新たな発見があるかもしれませんね。
Posted by You at 2007年12月16日 08:04
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